要件定義で決める機能要件「やること」「やらないこと」

(2025.12.26)

要件定義で決める機能要件「やること」「やらないこと」

機能要件は、Webサイトに実装する機能を検討し、実装するかどうかを判断する工程です。リニューアル時に必要な機能を思いつく限り洗い出し、判断の軸(「目的」「対象」「運用条件」)を基準にして、「やること」「やらないこと」に切り分けます。

要件定義で決める機能要件「やること」「やらないこと」:目次

機能要件とは

機能要件とは、Webサイトやシステムが目的を果たすために必要な機能を洗い出し、機能単位で実装するかどうかを判断することです。目的・対象・運用条件を判断の軸にして、機能を「やること」「やらないこと」に振り分けることで、見積やスケジュール、制作体制、運用体制を固めていきます。

機能要件の定義

何を決めるか

機能要件は、「リニューアル後のWebサイトの役割」を機能単位で選定し定義します。思い当たる機能をピックアップして、それぞれを実装対象として採用するかどうかを判断します。

実装する機能の例
  • 問い合わせを受け付ける機能
  • 情報を更新・管理する機能
  • 必要な情報を検索・参照する機能

機能要件が影響する範囲

機能要件は後工程の前提条件

機能要件で確定した内容は、以降の工程の前提条件として扱われます。実装対象となる機能を基に必要な工数が算出され、制作・検証・公開までのスケジュールが組まれ、見積が作成されます。

機能要件が影響する工程
  • 見積(コスト)
  • スケジュール(納期)
  • 体制(誰が作る・誰が運用する)
  • 運用設計(更新・管理・判断の流れ)
機能要件の成果

機能要件の成果は、各機能において、採用(やること)・見送り(やらないこと)・保留(できないかも)が整理され、関係者間で共有できる状態になっていることです。共有できる状態が整っていることで、後から見返した際に判断の経緯が説明でき、関係者間で認識を共有しつつ次の工程に進むことができます。

状態を共有できる
  • 機能の採否に理由が紐づき、説明できる
  • 「やる」「やらない」「できないかも」が区別されている

最初に決めるのは「ジャッジの軸」

機能要件を整理する前に必要なのが、判断に使う基準です。思いついた機能をそのまま検討し始めると、意見や立場によって判断がブレやすくなります。先に「この基準で判断する」と示すことで、機能の採否を同じ基準で評価できるようになります。

ジャッジの軸は3点セット

1〜2行で判断に使える粒度

ジャッジの軸は、機能を検討するたびに立ち戻る判断基準です。内容は多くなくてよく、1〜2行で確認できる粒度にまとめます。最低限そろえておきたいのは、次の3点です。

ジャッジの軸
  • 目的(達成したい状態)
    このWebサイトで実現したい状態は何か。成果として何が変わるのか。
  • (誰のどんな行動か)
    主に想定する利用者と、その人に促したい行動は何か。
  • 運用前提(誰が回すか・回せるか)
    公開後に誰が、どの程度の負荷で運用する想定か。

この3点がそろっていることで、機能が目的に寄与するか、対象の行動に必要か、運用に耐えられるかを同じ基準で判断できます。

軸の運用ルール

長文化させない

ジャッジの軸は、説明のための文章ではなく、判断に使うための基準です。細かい背景説明や前提条件を盛り込みすぎると、確認や判断することがむずかしくなります。短く、すぐに判断できることが重要です。

機能の採否で迷うことが多い場合は、軸そのものを見直します。目的・対象・運用前提のうち、どこが曖昧になっているかを確認し、必要に応じて軸を整え直します。

機能要件の整理手順

引き出しのカードを要件に見立てて整理している写真

機能のピックアップ

機能の洗い出し

機能要件の整理は、必要になりそうな機能を広く洗い出すところから始めます。この段階では、実装可否や優先度を気にせず、思いつく機能を機能単位でどんどんピックアップします。要望やアイデアを出し切ることで、検討漏れを防ぎ、必要機能の全体像を把握することができます。

また、ピックアップした機能はどこかに溜め込まず、次の「選定」に速やかに移行します。「洗い出し」と「選定」を分けて進めることで、テンポよく機能要件を整理することができます。

  • 思いつく限りピックアップしてよい
  • ピックアップした機能は選定に回す

一次選定:軸で振り分ける

振り分け先

機能のピックアップが終わったら、ジャッジの軸を使って一次選定を行います。この工程では、洗い出した機能を一つずつ確認し、今回の要件として扱うかどうかを整理します。

ここでは機能を次の2つに振り分けます。

  • やること(候補)
    現時点では実装対象として検討を進める機能
  • やらないこと(確定)
    Webサイトの役割には含めないと判断した機能
一次選定の判定観点

一次選定では、あらかじめ定めたジャッジの軸に照らして機能を選定します。判断に使う基準は、次の3点です。

  • 目的に効くか
    Webサイトで達成したい状態に寄与するかどうか。
  • 対象ユーザーの行動に必要か
    想定している利用者の行動に結びつく機能かどうか。
  • 運用条件に見合うか
    公開後の体制や負荷を考えたときに、現実的に回せるかどうか。
「やらないこと」が確定すると見えてくるもの

一次選定で「やらないこと」が整理されると、プロジェクト全体の輪郭が明確になります。また、「やること」に振り分けられた機能がなぜ必要なのかが明確になり、判断の背景を説明しやすくなります。

  • プロジェクトの輪郭(Webサイトの役割の境界線)
  • 「やること」の純度が上がる
  • 判断の経緯を後から説明しやすくなる

二次選定:現実条件で「できないかも」を仕分ける

二次選定の箱

一次選定で「やること」に振り分けられた機能は、現実的な条件を基に「できないかも」を整理する二次選定へと進みます。実装の方向性をより具体的にし、機能要件の精度を高めていきます。

  • やる(暫定)
    現時点の条件では実装を前提として進められる機能
  • できないかも(保留)
    条件次第で実装の可否が変わるため、判断を保留する機能
「できないかも」の理由ラベル

「できないかも」に分類した機能には、理由をラベルづけします。理由を明示することで、何が判断を止めているのかが見えやすくなります。

ラベルの例
  • 予算:想定している費用内に収まるかの確認が必要なもの
  • 納期:スケジュール上の制約が影響するもの
  • 技術:技術的な検証や実現方法の整理が必要なもの
  • 体制:実装や運用を担う人員・役割が定まっていないもの
  • その他:(理由を1行で明記)
「できないかも」の扱い

「できないかも」に分類した機能は、今後の検討事項につなげる可能性があるため記録に残します。リニューアル後の運用フェイズや第2フェーズで再度議題に上がることがあるためです。また、理由ラベルが付いていれば、確認すべき事項が明確になり、再検討の際の判断が進めやすくなります。

機能要件で見えてくるリスク

ドミノを止めて、リスクを防ぐように見せている写真

リスクの典型パターン

やることが増えすぎる

選定での判断が曖昧だと、「やること」に機能が集中します。機能が増えるほど、必要な工数や確認事項も増え、コスト・納期・品質・運用のすべてに影響が出てしまいます。

影響する範囲
  • コスト/納期/品質/運用、など
やらないことが曖昧

「やらないこと」が曖昧だと、検討対象となる機能の範囲が定まらず、同じ議論が繰り返されやすくなります。

想定されるリスク
  • 議論が後から復活して揉める
できないかもが未ラベル

なぜ判断が保留されたのか分からなくなり、後工程で再調整が必要になる可能性があります。

発生しやすい問題
  • 後々の再調整
軸が弱いまま機能を詰める

ジャッジの軸が曖昧なまま進めると、判断が都度ブレ、議論が堂々巡りになりやすくなります。

結果として起こること
  • 機能議論が堂々巡りになる

リスクを回避するには

判断を“形”にする

機能から派生するリスクは、判断を曖昧にせず後から参照できる形として残すことが重要です。特に「やらないこと」をきちんと決めておくと、機能範囲の境界線(ライン)が明確になります。また、「できないかも」は理由ラベルを付けてリニューアル後の検討材料として残すことで、今回の事案と区別することができます。

対応方針
  • 「やらないこと」を確定して境界線を作る
  • 「できないかも」を検討材料として残す

要件定義で決める機能要件「やること」「やらないこと」のまとめ

機能要件は、思いついた機能を並べるのではなく、機能の役割を共有するための定義です。目的・対象・運用前提を軸に、「やること」「やらないこと」「できないかも」を切り分けることで、プロジェクトメンバーや関係者と役割を共有することができます。

  • やること
    目的・対象・運用前提を軸に選定した実装対象となる機能です。
  • やらないこと
    実装対象を明確にし、その後の議論をスムーズにするためのラインです。
  • できないかも
    やむを得ず保留にした、次フェイズの検討対象です。

選定結果を形として残すことで、見積やスケジュール、体制、運用の検討時に、判断を引き継ぐことができます。機能範囲を曖昧にしないことで、議論が前に進む状態をつくることが、この工程の役割です。

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