アクセシビリティに配慮した読みやすいフォントとレイアウト設計

(2025.4.16)

アクセシビリティに配慮した読みやすいフォントとレイアウト設計:目次

WEBデザインにおいて『フォントの選び方』や『文字の見やすさ』は、ユーザー体験(UX)を大きく左右する重要な要素です。特にアクセシビリティの観点では、視覚障害や学習障害、高齢者の視力変化など、さまざまな人たちの多様なニーズに応えるために、より一層の配慮が求められます。

今回のテーマでは、「可読性」と「視認性」という2つの観点から、読みやすさを高めるためのフォントとレイアウト設計について解説します。

フォント選びと文字の見やすさ

『フォントの選定』と『文字の読みやすさ』はデザインにおいて最も重要な要素のひとつですが、アクセシビリティ対応においてはさらに気を付けていかなければなりません。

可読性と視認性の違い

文字の可読性と視認性はアクセシビリティにおいてもそれぞれ重要な役割を果たします。

文章の可読性

『文字の形状』『文字間隔(カーニング)や行間』『サイズ』に気を配ることで可読性が高まるので、長文を扱う際に重要な役割を果たします。また、アクセシビリティの観点からは、以下のような理由で可読性の向上が求められます。

視覚に障害がある人

視覚に障害がある人たち、特に低視力や視力障害を持つ人たちにとって、適切なフォント選びやフォントサイズ、行間の調整は、テキストをスムーズに読み進めるために不可欠です。文字間隔や行間が適切でない場合、文字がつながったり重なったりして読みづらくなるため、可読性の高いデザイン、文章レイアウトが重要です。

学習障害を持つ人

学習障害を持つ人は知的な発達に大きな問題がなくても、『読む・書く・計算する』といった特定の学びがとても難しく感じることがあります。例えば、ディスレクシア(読み書きの困難)はそのひとつで、文字を読むのに時間がかかったり、文章を理解することがむずかしいと感じたりすることがあります。アクセシビリティ対応では、こうした人たちが情報にアクセスしやするために、フォントやレイアウトを工夫して誰にとっても見やすく使いやすいデザインになるように心がけます。

文章の視認性

『文字の太さとコントラスト』『フォントの簡潔さ』『大文字と小文字の形』などに気を使い視認性を高めれば、ボタンなどのUI(ユーザーインターフェイス)やラベルなどの情報を素早くキャッチすることが出来できます。

視覚に障害がある人

低視力や色覚異常のある人たちがコンテンツを認識しやすくするために、デザイン要素に十分なコントラストが求められます。視認性の高いフォント採用すれば、これらの人たちが情報を識別するための手助けとなります。

高齢者や低視力者

視認性が高いフォントは、視力の低下した人たちは、視覚的な手がかり(フォントの太さ、文字の形状など)を頼りにして情報を識別します。大きくて明確なフォントや、シンプルで飾りが少ないフォントを採用することでこれらの人びとの手助けとなります。

  • 可読性:長文を読んで理解しやすいかという点にフォーカス
  • 視認性:文字をすばやく認識できるかという点にフォーカス

『可読性』と『視認性』両方を高めることが、最終的により良いアクセシビリティ対応の鍵となります。

適切なフォントの選び方

アクセシビリティ対応においてはシンプルで視認性が高いフォントを選定することが大変重要です。特に、ユーザーのデバイス(端末)に標準で搭載されている読みやすく無駄な装飾が少ないフォントを選ぶことをおすすめいたします。

標準フォントとWEBフォント使い分け

WEBサイトで使われるフォントには初期状態からデバイスに搭載されている標準フォントと、Google Fontsなどのサービスからダウンロードして使うWEBフォントがあります。どのフォントを採用するにしても、WEBサイトの特徴に沿て慎重にフォントを選定することをおすすめいたします。

メリット・デメリット一覧
パターン メリット デメリット
標準搭載フォントだけで構成 表示が早く、環境依存が少ない デザインが制限される
Webフォント(Notoなど)を併用 品質が高く、UD設計されたフォントも使える 読み込み遅延のリスク
アクセシビリティ視点で日本語フォント比較
フォント名 特徴 標準搭載状況 搭載OS アクセシビリティ評価 おすすめ度 備考
BIZ UDPGothic 教科書体ベース。視認性と可読性を両立。UD(ユニバーサルデザイン)仕様 Windows 10以降 ◎ 非常に高い ★★★★★ UDフォントとして推奨
Noto Sans JP 画面表示に強く、多言語対応。文字バランスが整っており上品 × WEBフォント ◎ 非常に高い ★★★★☆ Google Fonts: モダンでシンプルな印象を与えやすく、どんな年齢層にも対応可能。
Kosugi / Kosugi Maru 非常にシンプルで均一な字形。小さな文字でも崩れにくい。 × WEBフォント ◎ 非常に高い ★★★★☆ Google Fonts: シンプル志向・テキスト量が多い場面におすすめ
Meiryo 大きめで読みやすく丸みのある字形 Windows Vista以降 ○ 高い ★★★★☆ 画面表示に特化して設計され、特に小さい文字で強い
Yu Gothic モダンで細身。macOSとWindowsの両方に標準搭載 Windows 10以降 ◎ 非常に高い ★★★☆☆ 細くてコントラストが低く、小さい文字では読みにくい
sans-serif フォールバック用でユーザー環境により異なる 環境依存 環境依存 環境依存 ★★☆☆☆ 最後の保険的役割。どのフォントが表示されるかは不確定
BIZ UDMincho BIZシリーズの明朝体。明朝体ながら視認性と可読性に配慮 Windows 8.1以降 ◎ 非常に高い ★★★★☆ 本文向け。明朝を使いたい場合はこれ一択
バランスパターン
font-family:  "Noto Sans JP",    Meiryo,   "BIZ UDPGothic",   "Yu Gothic",   sans-serif;

Noto Sans JPがメインとなり、可読性と視認性のバランスを取りたい場合の事例です。このWEBサイトも設定はバランスパターンです。多言語対応やブランド統一性を重視する場合に有効で、企業サイトや教育・公的機関系など一般ユーザー向けの情報発信型のWEBサイトに向いています。

ユニバーサルデザインパターン
font-family:   "BIZ UDPGothic",   "Noto Sans JP",   Meiryo,   "Yu Gothic",   sans-serif;

BIZ UDPGothicがメインとなり、アクセシビリティ対応を重視(特に視認性)で高齢者・弱視ユーザー・学習障害など幅広いニーズに対応したユニバーサルデザインパターンです。アクセシビリティ最優先のWEBサイト(福祉系、病院、行政サイトなど)や、高齢者や障害を持つユーザーが多い対象のWEBサービスに向いています。

適切なフォントサイズ、行間、文字間の調整ポイント

アクセシビリティ対応においては『誰にとっても読みやすい』、つまり視力の弱い人・読み書きに困難があるなどなんらかの障害を持つ人や高齢者に『誤読・疲労が起きにくい文字設計』をすることが重要です。

デジタル庁では本文のサイズは16px(1rem)以上、見出し含めて45pxまでのサイズを構成する文章の文字サイズと定めています。また、14pxの小さい文字はフッター要素などの付随する要素やUIやコンテンツを構成する際の領域的な制約がある場合のみに使用を限定していて、14px未満の文字は原則使用しないと定められています。

CSSによる基本設定例
基本的なフォント設定

フォントサイズをアクセシビリティに対応した相対的な単位にする場合は『rem』を使用します。一般的なブラウザでは、1remは16pxと設定されています。以下はCSSへの記載例です。

html {
	font-size: 100%;
}
body {
	font-size: 1rem;//16px相当
	font-family: "Noto Sans JP",    Meiryo,   "BIZ UDPGothic",   "Yu Gothic",   sans-serif;
	font-weight: 400;
	line-height: 1.5;
	color: #000000;
}
CSS基本設定内訳
プロパティ
htmlタグのfont-size ブラウザの標準フォントサイズを100%定義します。(現在ほとんどが16px)
bodyタグのfont-size htmlで定義したフォントサイズをコンテンツで使われる標準フォントサイズ1remとして定義します。
font-family 前項目の『適切なフォントの選び方』を参照してください。
font-weight コンテンツで使われる標準フォントの太さを定義します。400(通常)または 500
line-height 最低 1.5 以上あると読みやすいです。1.7~1.8程度も見やすい
見出しと文章のバランス

表組はデザインによって異なる場合もありますが、バランスのとれた見出しと文章の一例です。

各要素に適したスタイル一覧
用途 太さ 行間 下部余白 解説
セクション(section)     4rem セクション上部の余白も4rem
段落(paragraph) 400(通常)または 500 1.4~1.6 2rem 日本語フォントは500でも自然なことが多い。長文は軽めが読みやすい。
小見出し(h3~h5) 500~600 1.2~1.3 1rem ほんのり強調したいときに。本文との差別化にちょうど良い。
見出し(h1, h2) 600~700 1.1~1.2 2rem セクションごとに配置。メイン見出しは目立たせてOK。日本語フォントは700でも潰れにくい。
強調 600~800 1.4~1.6 太字が必要な時。読み飛ばし防止や行動喚起に効果的。(強い強調やCTAボタン)

コンテンツの核となる文章にはセクション、段落、見出し、など様々な要素が複数のパターンで配置されることがほとんどです。表組は参考のための一例で、デザインによって変更することもあると思いますが、パターンをきちんと定めておけばWEBサイトの規模が大きくなっても破綻することなく可読性を担保することができます。

レイアウト設計の基本

WEBデザインにおけるレイアウト設計はとても重要ですが、アクセシビリティを考慮した読みやすく視認性の高いページにするにはさらに気を付けなければならないことがあります。

行の長さ:1行の文字数

情報が取得しにくいデザインは、1行の文字数が長く視線移動が大きくなるレイアウトです。このようなレイアウトは『素早く情報を得られない』『読み疲れて情報が頭に入りにい』など情報取得が難しいケースが多く、優れたUX体験を提供するデザインとはいえません。理想は日本語で35~45文字程度、英語で60~75文字程度で、レスポンシブ対応時もこの文字数を意識ながらレイアウトを設計していきます。

文章の配置

一般的なWEBサイトのテキストは左揃えが基本となっています。テキストの両端揃えは紙媒体では整って見えることもありますが、WEBサイトでは単語間のスペースが不自然に空いてしまい、可読性が落ちることがあります。

段落の長さと余白の使い方

文章の1段落は2~5行以内に収めると、視認性と集中力の持続に効果的です。段落間には適度なマージン(余白)を設けることで、文章のまとまりが明確になります。『詰めすぎない』『空けすぎない』がWEBサイトの文章作成のポイントとなります。

コントラスト比と背景色

テキストと背景のコントラスト比が十分でないと、視力多様性を持つ人たちにとって読みにいコンテンツとなってしまいます。WCAGでは、通常のテキストは 4.5:1以上、大きな文字(18pt以上または14pt太字)は 3:1以上が推奨されています。テーマカラーを基準に、背景色にも気をつけながらまぶしすぎない中間色を採用するなどデザインとアクセシビリティのバランスを意識しましょう。

文字拡大時の考慮ポイント

emやremを使用
font-size: 1rem; // 基準が16pxの場合は16pxになる
padding: 1.5em;

フォントサイズやマージン、パディングなどを相対的な単位で設計することで、ズームしても自然に拡大されます。

フレックスレイアウトを使用
.container {
  max-width: 60ch; // 文字数ベースの幅指定もおすすめ
}

width: 500px; のように固定幅にしていると、拡大時に横スクロールが発生しやすくなるので、% や max-width を使ったレスポンシブなレイアウトを心がけましょう。

レイアウトの崩れ

文字サイズを200%にした際、display:flexなどでレイアウトしていると段落ちしてしまうことがあります。WCAG 2.1(1.4.4 Resize text)で提示されている「崩れない」は、情報が欠落しない/操作ができなくならないという意味合いが強くて、視覚的に「段組みが崩れる」「折り返しが変わる」みたいなものはユーザーの視線移動やリズムを整える助けになり、むしろ良い変化の場合もあります。なので、デザイン観点での「崩れる」を再定義する必要があります。

デザイン視点での“崩れ” アクセシビリティ視点では?
カラムが縦並びになる OK(読みやすくなる)
文字が折り返す OK(スクロール防止)
見出しと本文の間隔が変わる OK(むしろ読みやすい)
テキストが重なる NG(読めなくなる)
UIが操作できなくなる NG(致命的)
  • 「視覚的な変化=悪」ではなく、「読める状態が保たれているか」がポイント
  • 「テキストの再流動化や段落ちは、むしろレスポンシブで必要な変化
  • 「崩れることが目的じゃなく、「拡大しても意味が伝わる」ことがゴール

文章を読みやすくするレイアウトデザイン

読みやすさは、すべてのユーザーに情報を正しく届けるための第一歩です。WEBアクセシビリティの視点から『読みやすさを高めるための基本的なテクニック』を3つに絞りご紹介します。特別な技術やツールがなくても、今日から実践できる内容です。

Before / Afterで「読みづらさ」を可視化

読みづらいページは、実は見慣れてしまって気づきにくいものです。そこで役立つのが「Before / After」の視覚的な比較です。

読みにくい例(Before)

テキストと背景のコントラスト比が十分でないと、視力多様性を持つ人たちにとって読みにいコンテンツとなってしまいます。WCAGでは、通常のテキストは 4.5:1以上、大きな文字(18pt以上または14pt太字)は 3:1以上が推奨されています。テーマカラーを基準に、背景色にも気をつけながらまぶしすぎない中間色を採用するなどデザインとアクセシビリティのバランスを意識しましょう。
文字サイズを200%にした際、display:flexなどでレイアウトしていると段落ちしてしまうことがあります。WCAG 2.1(1.4.4 Resize text)でいう「崩れない」は、情報が欠落しない/操作ができなくならないという意味合いが強くて、視覚的に「段組みが崩れる」「折り返しが変わる」みたいなものはユーザーの視線移動やリズムを整える助けになり、むしろ良い変化の場合もあります。なので、デザイン観点での「崩れる」を再定義する必要があります。

読みやすい例(After)

テキストと背景のコントラスト比が十分でないと、視力多様性を持つ人たちにとって読みにいコンテンツとなってしまいます。WCAGでは、通常のテキストは 4.5:1以上、大きな文字(18pt以上または14pt太字)は 3:1以上が推奨されています。テーマカラーを基準に、背景色にも気をつけながらまぶしすぎない中間色を採用するなどデザインとアクセシビリティのバランスを意識しましょう。

文字サイズを200%にした際、display:flexなどでレイアウトしていると段落ちしてしまうことがあります。WCAG 2.1(1.4.4 Resize text)でいう「崩れない」は、情報が欠落しない/操作ができなくならないという意味合いが強くて、視覚的に「段組みが崩れる」「折り返しが変わる」みたいなものはユーザーの視線移動やリズムを整える助けになり、むしろ良い変化の場合もあります。なので、デザイン観点での「崩れる」を再定義する必要があります。

読みにくい例(Before) 読みやすい例(After)
  • 小さい文字(14px以下)
  • 詰まった行間(line-height: 1.2)
  • 文章の横幅が広すぎる
  • フォントサイズは16px以上
  • 行間は1.6~1.8でゆったりと
  • 最大でも1行50~70文字程度に制限
読みやすい例のCSS設定例
body {
	font-size: 16px;
	line-height: 1.6;
	max-width: 600px;
}

情報を「構造化」して視認性をアップ

アクセシビリティ対応においては、ただ文章を整えるだけでなく情報の『構造』をきちんと設計することも重要です。見た目だけでなく情報の構造まできちんとデザインすることで、視覚多様性の人たちが読み上げソフトを使う手助けになるなど、よりアクセシブルで質の高いWEBサイトとなります。

  • 長い文章は段落や改行で分ける
  • 箇条書きを使って整理する
  • 強調したい言葉を太字にする(色だけに頼らない)
改善前の文章例 改善後の文章例

また、重要なのは視認性と操作性と情報設計です。

特に重要なのは次の3点です。

  • 視認性:読みやすく、見つけやすい
  • 操作性:誰でもスムーズに操作できる
  • 情報設計:伝わる順序と構成

ツールを使って「読みやすさ」をチェック

完成したWEBページは見た目や感覚だけではなく、ツールで客観的にきちんとアクセシビリティ対応されているかを確認することも大切です。

文章の読みやすさチェックツール
ツール 料金 提供形態 概要
WebAIM Contrast Checker 無料 オンラインツール コントラスト比を簡単にチェックできるツールで、WCAG基準に基づいて色の適合度を確認できます。色を入力するだけで、判定結果がすぐに表示されます。
Google Lighthouse 無料 ブラウザ拡張機能 アクセシビリティチェックだけでなく、ウェブサイトの全体的なパフォーマンスも評価します。サイト全体の健全性を総合的にチェックしたい場合に便利です。
アクセシビリティチェック表

またアクセシビリティのチェック表はエクセルデータなどで一覧で用意しておくのもおすすめします。情報通信アクセス協議会・ウェブアクセシビリティ基盤委員会が独自に定めたウェブコンテンツの JIS X 8341-3:2016 対応度表記ガイドラインを用意しています。現在、このガイドラインが一般的なチェック基準となっていますので一読することをおすすめいたします。

また、私たちケイツー・インタラクティブでも、『ウェブコンテンツの JIS X 8341-3:2016 対応度表記ガイドライン』を基に『ウェブアクセシビリティ試験』を実施しました。こちらのページにチェック表も掲載していますので是非参考にしてみてください。

アクセシビリティに配慮した読みやすいフォントとレイアウト設計のまとめ

フォントや文字レイアウトは、単なるデザインの一部ではなく、情報伝達の根幹を担う大切な要素です。「可読性(文章を読みやすく)」と「視認性(瞬時に認識しやすく)」を両立させることで、誰にとってもわかりやすく、使いやすいUX(ユーザー体験)となります。

標準搭載フォントとWEBフォントを適切に使い分け、読みやすさを意識した文字サイズや行間を設計することが、アクセシビリティ対応への第一歩です。全ての人たちが快適に情報へアクセスできるよう、読みやすさに配慮した設計を意識していきましょう。

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